経済産業省は3日、太陽光など再生可能エネルギーの全量買い取りに関するプロジェクトチームの会合を開き、制度を導入した場合の普及量や負担額の試算を公表した。買い取り価格を高めに設定すれば、普及に弾みがつくが、企業と家庭の負担も増し、民間の負担は最大で年間8227億円に上る。政府が掲げる温暖化ガス削減目標を達成しようとすれば、負担はさらに膨らむ可能性もあり、政府は難しい判断を迫られそうだ。
買い取り制度は政府が掲げる国内の温暖化ガスを2020年までに1990年比25%減らす目標を達成するための主要対策と位置付けられている。経産省は試算を基に、月内に複数の制度案を提示する。国民からの意見を募った上で、来年の通常国会への法案提出を目指す。
電力会社が、家庭や企業が太陽光などでつくった電力を高値で買い取ってくれれば、導入のインセンティブが働き、再生可能エネルギーの普及に弾みがつくと期待されている。ただ、電力会社が高値で買い取れば、コストとなり電力料金に転嫁されるため、家庭や企業の負担が増す。集合住宅や、住宅の構造の問題で太陽光パネルを設置できない家庭は、負担だけを強いられ不公平、との批判もある。
買い取りをめぐっては、去年11月から太陽光でつくった電力のうち、消費した以外の余剰分に限った制度を始めた。民主党は去年の衆院選のマニフェスト(政権公約)で、すべての再生可能エネルギーの全量を買い取る制度の導入を明記しており、経産省で検討を進めていた。
経産省がこの日示した試算は、太陽光でつくった電力については、原則としてすべてのケースで1キロワット時42円で買い取り、10年間適用することを前提にしている。そのうえで、風力や地熱などの再生可能エネルギーについて複数の買い取り価格、期間を設定し、試算した。
例えば、太陽光でつくった電力を同42円で10年間買い取るとしたうえで、風力や地熱などの電力を同20円で買い取る場合、導入量は15年後に702億キロワット時増える。2007年の総発電量は約1兆キロワット時だった。
一方、この事例では買い取り費用は8227億円。これを企業や家庭が負担する必要がある。単純計算すると、国民一人当たり年間7000円弱の負担になる。
再生可能エネルギーの普及「25%削減」達成に なお国民負担も
政府は国内の温暖化ガスを2020年までに1990年比25%削減する目標を掲げている。実現には、温暖化ガスをほとんど排出しない原子力発電や、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーの普及が不可欠だ。
政府が今国会に提出する予定の地球温暖化対策基本法(仮称)案には、1次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの比率を10%にする方向で調整している。現在、同比率は3%程度にとどまる。今回の試算で最も負担が大きい事例を当てはめても、この比率は20年で7%程度にしかならない。
10%に引き上げるなら、例えば太陽光発電の普及を現在の50倍以上にする必要があるが、経産省は今回、麻生前政権時に採用した約20倍で試算した。省内に「これ以上の負担を国民に強いることができるのか」との声があったためという。
現政権で、負担の議論が具体化したのは今回が初めて。今後は国内排出量取引制度や地球温暖化対策税(環境税)など国民に負担を伴う政策について議論が始まる。
25%減目標の達成のために、国民や企業に全体でどのくらいの負担を求めるのか。大枠を提示する必要がありそうだ。:平成22年3月4日 、日本経済新聞より